全国の石垣ファンの皆様、お待たせしました。今回は丸山千枚田の「石垣」についてご紹介します。
日常生活の中で身近な石垣と言えば、町中の坂道周辺やお城などで見るイメージが強いと思います。それらと比べ、棚田の石垣には”珍しい”物や、”少し違う”様な特徴が見られます。特に丸山千枚田では、400年以上の歴史の中で様々な人の手が加わる事で、多様な石垣を見る事ができます。石垣に着目して畦道を歩くのも楽しいですよ♪
まずはこちらをご覧ください。
飛び渡り
背の高い石垣の一部に「飛び渡り」と呼ぶ石があります。石垣上部の草刈り作業時など、足場として活用します。敵の進入を防ぐ為のお城にはもちろん、見栄えが必要な庭園などにも見られない、棚田ならではの構造です。
胴木(どうぎ)
棚田ではどうしても地盤が緩くなってしまうため、石垣の沈下を抑える目的で丸太を用いる場面があります。これは湿地帯のお城や、水堀に面した石垣でも見られます。丸山では赤松をはじめとする木々を利用したそうです。新しく補修した箇所では長方形のコンクリートブロックを利用しています。
さつき
石垣の上部にさつきが植えられた場所があります。これは、石垣の上に盛られた土を保持し、補強する目的があります。田んぼを造る為に四方を畦で囲う必要がある訳ですが、その土部分は当然石垣よりも崩れやすいです。しかしすべてを石垣にするのは手間も費用もかかる…。そこで植物の力をかりました。さつきは草丈や根の張り方が棚田の補強に適しているそうです。
野面積み、その他の工法
今更になりますが、石垣の種類についてです。丸山千枚田の基本的な石積みは「野面(のづら)積み」の「乱層積み(谷積み)」と呼ばれる物になります。これは石垣の分類区分の話で、石の加工度合い、積み方で呼び分けをしています。加工での分類は、加工度合いが少ない順に「野面積み<打込みはぎ<切込みはぎ」となります。積み方の分類は、石同士の継ぎ目がランダムな物を乱層積み(谷積み)、レンガ積みの様に隣同士の高さがあった様な積み方を整層積み(布積み)と呼びます。つまり丸山千枚田の石垣は「自然石」を使った「ランダム」な積み方が多いという事です。
野面積みの際は、それぞれの石が5個以上と隣接するように組むのだそうです。ランダムに積むと書きましたが、適当に積むわけでは無く、細やかな技術がいくつもあります。これら石積みの技術に優れた技術者集団として穴太衆(あのうしゅう)が古くから有名で、「穴太衆積」と呼んでブランド化される程に石垣の作り方にも良し悪しがあるそうです。
その他、石垣とは違ってきますが崩れた斜面を補強する手段も用いています。
緑色の袋は「植生土嚢」、時間が経つと中から植物が生えてきて自然な見た目で修復できるという物です。丸山千枚田は景観維持にも主眼を置いている為、活用しています。石垣周辺だけでなく、土の斜面補修で活躍します。
丸太で応急的に処置した箇所もあります。2024年1月現在、丸山千枚田で現場作業をしている常設の人員は10人程。平均年齢は約60歳です。農繁期の台風後ともなれば、主作業の合間に補修時間を取るのは厳しいですし、業者に頼むにも予算的な限度があります。なので、その時々の状況に合わせた補修対応をしています。
最後にその他の石垣です。現代になってからの施工では、石同士の間にコンクリートを使用していたり、四角に加工された石を利用したりしています。田んぼの各所で異なる年代、異なる工法の石垣がみられるのも丸山千枚田ならではかと思います。
いかがだったでしょうか?棚田には石垣にも見所がある事が伝われば嬉しいです。冬の丸山千枚田は訪問者が減り静かな雰囲気の場所になりますが、朝の雲海(⇩Postの画像)を見たり、普段は見ない石垣に着目して観光するのも楽しいと思います!
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